9-8《宇宙建築》と火星移住計画

書籍『建築を学ぶためのパターン・ランゲージ』に収録されているパターン9-8《宇宙建築(Space Architecture)》には、次のように書かれています。
宇宙建築を可能にするための新しい技術や素材、構法などに興味を持ち、日常の学びの中に未来のビジョンを取り入れていきましょう。
これから建築を学ぶ大学生や専門学校生にとって、このメッセージはとても重要です。
なぜなら、いまの十代・二十代にとって「宇宙建築」は、もはや自分とは無縁の空想ではなく、現実の進路や職能と地続きのテーマになりつつあるからです。
実際、宇宙建築に力を入れているスーパーゼネコンの竹中工務店は、東京・三田の建築会館ギャラリーにて、2025年12月10日(水)から12月14日(日)まで「宇宙のくらしをつくる建築展|Lunar Architecture by TAKENAKA」を開催し、宇宙建築に関する研究成果を発表しました。
展示の中心となったのは、月面探査初期の無人探査ロボット、宇宙飛行士のためのベースキャンプ、さらには民間スペシャリストによる長期滞在を想定した居住施設などです。
竹中工務店では、国際社会における宇宙開発が「軌道・月・火星での居住を本気で目指す段階」に入ったと捉え、宇宙QOL(Quality of Life)の高い居住空間と設計技術を重視した提案をまとめています。
その背景には、設計者・研究者を中心に部署や地域を横断して組織された宇宙建築タスクフォース(TSX:Takenaka Space eXploration)の存在があります。TSXは、さまざまな学術機関や企業と連携しながら、宇宙建築の実装に向けた活動を進めています。
また、2025年12月1日発行の建設業界向けビジネス誌『ARCHIES vol.6』では、「宇宙の建築|Space Architecture」が特集され、新しい「住む世界」をつくる建設職能と、宇宙建築市場の可能性が多角的に論じられています。
さらに、2025年12月11日には、ロバート・ズブリンによる『科学的かつ現実的で、崇高かつロマンティックな 火星移住計画』が刊行されました。イーロン・マスクに影響を与えた火星移住研究の第一人者である著者は、技術的・政治的・社会的な条件が整いつつある現在、火星移住は「いつか」ではなく「いつ実現するか」の問題になったと述べています。
21世紀のいま、火星移住はもはやSFではありません。それは、実現可能であり、かつ実現すべき人類史上最大級のプロジェクトであり、その一翼を担う存在として、これから建築を学ぼうとする若者たちが強く期待されています。
火星建築の具体的なイメージとしてよく知られているのが、2015年9月にNASA主催の火星基地設計コンテストで優勝した《MARS ICE HOUSE》です。ニューヨーク在住の日本人建築家・曽野正之・祐子らのチームは、火星の地下に存在する「氷」に着目し、ロボットによる採掘と3Dプリント技術を組み合わせて、氷の壁をもつ居住空間を構築するという斬新な提案を行いました。
火星で氷の家をつくり、着陸船内部を居住空間として活用し、酸素や食料を生み出すために緑化を進める──こうした構想は、もはや絵空事ではなく、現実味を帯びた未来像として語られています。
そう考えると、これからの大学や専門学校の建築学科では、「宇宙環境工学」「航空宇宙構造工学」「宇宙ロボット工学」といった分野横断的な学びが、当たり前に求められる時代が来るのかもしれません。
宇宙建築は、遠い未来の話ではなく、いまの学びの延長線上にある建築のフロンティアなのです。
ちなみに、このBlogを書いている今、NHKで放送100年特集ドラマ『火星の女王』が放送されています。
(やま)






