7-2《地域を読みとく》と『「風の谷」という希望』

『「風の谷」という希望』(安宅和人 2025 英治出版)の序文を読んでふるえました。人が生きていく環境を「テクノロジーと自然の融合が生み出す、残すに値する未来の姿」として編みあげようとした950ページにもおよぶこの大著は、四国の山間の集落の100年後を描写する、まるで詩のようなプロローグからはじまっているのです。
私たちは、人が満足感のある日常生活を持続していける環境は、地域の特性を活かすことが基本にあるべきだと実感しているので、《地域を読みとく》というパターンを書きました。そこで表現したかった環境づくりの基本的な方向性が、このプロローグに、心に触れることばでストレートに書かれていたからです。
そこで、この大著を精読しようと思いたちました。それにはまず、全体の構造をつかまえて、各項目の関係性を概観しながら読み進める必要があります。私たちの『建築を学ぶためのパターン・ランゲージ』も、全体の構造を可能な限り視覚化して、各パターン相互の関係性を示そうと試みましたが、同様な意図をもって、『「風の谷」という希望』の「ビジュアル目次」をつくってみました。普通、目次には章、節くらいまでしか示されないので、項も含めて可視化すると、全体の構造と項目間の関係性が、より分かりやすいのです。
なぜ、こんな面倒くさいことをするのかというと、精読するとは、要素間の関係性を読み解くことだという強い思いがあるからなのです。これは、クリストファー・アレグザンダーが『時を越えた建設の道』(1993 平田翰那訳 鹿島出版社)の「本書を読む前に」で、「本書の内容は、細部よりもむしろ全体の把握が重要であろう。読者が本書に1時間しか割けないなら、最初の2章を丹念に読むより、全体にざっと目を通すほうがずっと意味がある」と書いてあることに影響されてもいます。アレグザンダーこそ、述べたいことの全体の構造を伝えようとした人だったと思います。
私も、何かをつくりだそうとするときには、構造(Structure)と物語(Story)とデザイン(Style)の3Sが含まれているようにしたいと、いつも願っています。
(なべ)


